PERSON
化学出身からITの最前線へ、
空間制御技術で拓く未来
HIROKI
NISHI
西 弘樹
新規事業開発、技術開発、プロジェクトマネジメント
工学部 応用科学 修了
[拠点:浜松本社]
「誰もが自動走行の恩恵を受けられる社会へ」。私たちが目指しているのは、自動走行システム自体をインフラとして社会に実装することで、誰もが利用できる技術にすることです。
2024年2月にわずか2名体制で始まったこのプロジェクトも、2027年度のリリースを控え、実装フェーズに入ろうとしています。私の役割も幅広く、利害関係者要求の定義、システム要件分析、アーキテクチャ設計、検証など、システム開発の全体をリードしています。
そんな私ですが、バックグラウンドは応用化学。入社当時はIT知識がほとんどなく、様々な困難にぶつかりながら、目の前の業務に向き合ってきました。
専門外の壁を突破する力となったのは、「化学的な論理思考」と「システムズエンジニアリング」です。物事の本質を分解し、再構築すれば必ず道は拓ける。異分野への挑戦を恐れず、泥臭く継続することの意味を、私の経験を通じてお伝えできればと思います。
PROFILE
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2015
4月 スズキ入社。同年7月、四輪電気電子技術本部へ配属。故障診断通信の開発、車載ネットワークの通信仕様策定などに従事する。
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2016
5月 セントラルゲートウェイECU開発および車載サイバーセキュリティ開発を兼務
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2022
8月 システムズエンジニアリングを活用した開発業務改善に着手。
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2024
2月 次世代モビリティサービス本部へ異動。「モビリティ連携基盤」の事業化に向けたチームマネジメントを統括する。
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自動運転だけじゃない。クルマを超え、社会を動かす。
日本国内でも広がりつつある自動走行の技術。世の中で一般的にイメージされるのは、高性能なセンサーやコンピューターを搭載した車両やロボットでしょう。しかし、まだ価格は高く、なかなか誰もが手軽に使える技術にはなっていません。
これまでの軽自動車や軽トラックと同じように、生活に密着した技術にするためには、アプローチを根本から変える必要がある。そうした発想から、今私たちのチームで開発を進めているのがモビリティ連携基盤の一つ目の柱である、「インフラ管制自動走行システム」です。
キーとなる技術は、インフラ側に配置したセンサーから取得した「三次元リアルタイム空間データ」。それはまるで鳥の目線のように空間全体のデータを掌握することで、複数の車両やロボットをラジコンのように安全かつ効率的に制御する仕組みです。
また、空間の状況を正確かつリアルタイムに把握できるため、物の所在把握、駐車場監視、人流解析といった自動走行に限らないデータ活用サービスも実現します。これが2本目の柱である「動的空間データ連携基盤」です。
この「インフラ管制自動走行システム」や「動的空間データ連携基盤」を集約したモビリティ連携基盤を、工場、商業施設などの限られたエリアから導入し、将来は都市を支える社会インフラとして展開します 。モビリティ連携基盤という一つの基盤システムをいわば「ワリカン」で手軽に使っていただけるようにすることで、お客様1人あたりの価格負担を下げ、サービスの提供価値を上げる発想です。
現在は2027年度中のリリースを目指し、実証実験を重ねながら実装フェーズに向かっています。モビリティ・インフラ・クラウド・UIをまたぐシステム要件の整理、アーキテクチャ設計、品質基準や安全条件の定義など、必要なことを積み上げる日々です。
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化学の論理思考力で乗り越えた苦闘の日々
大学時代、私が化学を専攻したのは、燃料電池の開発に携わりたいと思ったため。自動車のエコ化を推進していけば、サステナビリティの実現に貢献できると考えていたのです。
ですが、スズキで最初に配属されたのは通信関連の部門。たしかにCASE関連の新技術ではありますが、同期はみんな情報系の出身の中、私だけがITと無縁でした。「なぜ、自分がここに?」上司に配属理由を聞くと、「西の論理的思考が大事なんだ」との答え。すぐにはピンと来ませんでしたが、日々の業務に向き合っていると、化学でやってきたことが活きていると実感できました。
A+B→C、化学反応により「C」という成果物を得ることが、化学の役割の一つです。ただ実際にAとBを反応させると、意図しない「C’ 」も副生成物として生じることもあります。そこで、反応条件を変えて結果を観察していく。その化学的な思考プロセスをもとに、私は実務でも、どうやったらできるのか、上手いくのかを常に考えます。上司や先輩の判断基準や動きを観察し、ゼロベースだからこそ失敗を恐れない姿勢で、トライアル&エラーを繰り返しながら仕事を覚えていきました。
一方で、プロジェクトで個別最適に陥り、不具合が発生した経験もあります。原因究明と再発防止に試行錯誤しても新しい不具合の発生を繰り返し、私は無力感を抱えていました。
そんな時、ある上司が教えてくれたのが、システムズエンジニアリングです。それは、航空宇宙産業などの超複雑なシステムを構築するため体系化された開発手法。部品単位ではなく製品全体を俯瞰し、要件・品質・責任範囲を構造的に捉え開発を進める、全体最適の求め方を学びました。このシステムズエンジニアリングの視点で業務を整理していくと、開発プロセスが劇的に改善。解決に向かって関係者と協業できる体制が作れてきたのです。
その後、当該の上司がモビリティ連携基盤技術の構想をスタート。「自動車すら構成要素の一部になる、究極のシステムズエンジニアリングをやらないか」と誘いを受け、私も立ち上げに加わりました。
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“合計300点”だからこそ実現できる未来
新技術を世の中に送り出すためには、自分の専門以外にも様々な知見が必要であり、多くの人の助けなしには成立しません。だからこそ、私がこれからのチームに必要だと思うのは「連携」できる人です。
私たちが取り組む新規事業の開発においては、「技術」の周辺に存在する事業要素にも目を向け、異なる専門家と連携して取り組む姿勢が必要です。今の時代に新たな価値を生み出せるエンジニア像は、このような人ではないでしょうか。
一つの専門分野で目指せるのは100点満点まで。一つの分野で60点でも5つの領域を扱える人の得点は300点になります。私たちが大切にしているのは、まさに領域を横断しながら価値を生み出す力です。
未知の領域に踏み込み、一緒に挑戦してくれる仲間を待っています。
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今、立っている場所が、自分の夢の現在地
燃料電池を開発したかった自分。専門外の領域での困難に折れそうな心を支えてくれたのは、一つの歌でした。「過去に成し遂げてきたことがあるから、この場所に立っているんだろう」。そうか、私は今いる場所で私の夢を叶えているんだ。
そして、私の立ちたかった場所は、誰かが立って夢を叶えてくれている。自分が立っている場所も誰かが立ちたかったはずの場所なんだ。だからこそ目の前の仕事と真摯に向き合おう――そう気持ちを持ち直しました。
何かを達成する鍵は、才能よりも継続、センスよりも姿勢だと信じています。自分の立つ場所こそが、夢を叶える現在地になり得る、と。
※部署名、内容はインタビュー当時のものです。